引っ越し初日は、思っていたよりずっと疲れた。格安の家賃に釣られて決めたこのアパートは、いわゆる事故物件らしい。前の住人が部屋で亡くなったとか、そんな噂を管理会社が申し訳程度に濁しながら教えてくれたけれど、私には関係ないことだと思っていた。幽霊なんて見えないし、霊感もない。それより、都心から少し離れているとはいえ、この広さでこの家賃は現実的な選択だった。中小企業の経理として働く私の給料では、背伸びをしない暮らしが一番だから。
段ボールをいくつか崩して、とりあえずベッドだけ組み立てた。新しいシーツを敷いて、体を横にしたのは日付が変わる少し前だったと思う。疲れていたのに、目を閉じると妙に部屋の気配が気になった。古い木の匂いと、かすかに残る生活の匂い。誰かがここで死んだという事実が、急に現実味を帯びて背中を冷たくした。けれど、体は眠りに落ちていく。私は深く息を吐いて、布団を顎まで引き上げた。
どれくらい眠ったのか。ふと、指先が冷たくなったような感覚で意識が浮上した。体を動かそうとして、自分の腕がぴくりともしないことに気づく。金縛りだ、と思った。学生の頃に一度なったことがある。あのときと同じ、目は開いているのに体だけが石みたいに重い。心臓が早鐘を打ち始めて、喉の奥がひりつく。なのに、まぶたの裏では部屋の天井がぼんやりと見えていて、暗闇に浮かぶ照明の影までやけにはっきりしていた。
布団の上から、何かが私の腰のあたりをそっと押した。手のひらみたいな形の、大きな何か。私は金縛りじゃなくて、まだ夢の中にいるんだと思おうとした。だけど、その感触は布団越しにじんわりと熱を帯びていて、まるで男の人の骨ばった手がゆっくりと私の体を確かめているようだった。ぞわりと背中が粟立つ。声を出したくても、唇がうまく動かない。「やめて」と心の中で叫ぶだけで、口からは短い吐息が漏れただけだった。
その手は私の腰からお腹へ、お腹から胸の下のくぼみへと滑り上がってくる。布団の重みごと、私の体を撫でるような動きはやけに丁寧で、それが逆に怖かった。誰かに触られている、という事実が頭の中で警鐘を鳴らしているのに、体の奥がじわりと反応してしまう。自分の意思じゃないところで、乳首がきゅっと硬くなっていくのがわかった。パジャマの生地の上を大きな手が行き来するたびに、胸の先が擦れて、ぞくぞくする感覚が腰にまで響いた。
「ふ、や……ぁ」
声が漏れてしまった。動かないはずの体が、かすかに震えた。その震えを、見えない相手はじっと味わうみたいに止まった。それから、布団がゆっくりと剥がされていく。私の体から布団が離れていって、薄暗い部屋の空気に肌が晒された。眠る前に着ていたのは、綿のパジャマ。上も下もゆったりしたものだったのに、今は体に張りついて、呼吸するたびに布地が肌をこする。
不可視の手が、両方の胸を包み込んだ。大きくて、厚い手のひら。指がゆっくりと沈み込むように柔らかさを揉みしだく。私の胸は特別大きいわけではないけれど、その手にはちょうど収まるくらいで、指の間にふに、と弾むのが自分でも恥ずかしかった。「ん……っ、あ」と喉の奥が鳴って、私は金縛りにされたまま、為す術もなく胸を揉まれ続けた。
「や、やだ……だめ、そこ……」
心の中の抵抗とは裏腹に、体はどんどん熱を帯びていく。乳首を指の腹で押し潰されるたびに、下半身がきゅんと疼いた。パジャマの上からでも、服の下が濡れ始めている。不可視の相手は私の反応を楽しむみたいに、執拗に乳首だけを摘んで転がして、時折そっと押し込んだ。私の呼吸は浅くなって、口が半開きになる。よだれがほんの少し唇の端を濡らした。
その手がようやく胸から離れたとき、私はほっとするどころか、もっと触れてほしいと思っている自分に気づいて泣きたくなった。体は金縛りのまま動かないのに、内腿のあたりが汗ばんで、太もも同士が擦れる感触すら敏感になっている。パジャマのズボンの上から、あの大きな手がそっと腿を撫でた。外側から内側へ、ゆっくりと。膝の上まで下りて、また太ももの付け根まで滑り上がる。その繰り返しに、内ももがひく、と震えた。
「ぁ、……んぅ」
ズボンの上から、割れ目のあたりを指先でなぞられた。ぐ、と食い込むように押し当てられる。そこだけ濡れて、布が肌に張りついているのがわかる。相手にも、わかってしまっている。それがひどく恥ずかしくて、涙がじわっと滲んだ。それなのに、あの指は逃さない。下着ごしにクリトリスを探り当てて、ぐりぐりと円を描くみたいに押しつぶす。びりびりした快感がお腹の奥まで突き抜けて、腰が跳ねそうになる。
「あっ、あ、……や、いい、やだ、それ……!」
私の泣き声みたいな声に、相手は一度手を止めた。けれど、それは拒否ではなく、体勢を変えるためのようで、パジャマのズボンと下着がゆっくりずり下ろされていく。腰を浮かせることもできないのに、寝たままゆっくりと。足首から抜かれた下着は、そのまま床に落ちたのか、布ずれの音がして見えなくなった。下半身が何もつけていない状態で、私は暗い部屋の空気に腿を閉じることもできず晒されている。
不可視の手が、むき出しの割れ目を直かに割り開いた。熱い吐息みたいなものを感じた気がしたけれど、見えない。感覚だけが、やけに生々しい。厚ぼったい何かが、濡れた入り口から割れ目をなぞる。舌だ、と気づいた瞬間、体の芯がぞっと震えた。大きくて、ぬるくて、肉厚な舌が、私のおまんこを遠慮なく舐め上げる。ぐちゅ、と水音が耳に届いて、それが自分の体から出ている音だと思うと頭がおかしくなりそうだった。
「んぅう……っ、あ、ダメ、そこ、きもち、……っ」
怖いはずなのに、気持ち良くて、私は涙をぼろぼろ零しながら腰を震わせていた。舌先がクリトリスを吸うみたいに扱くたび、足先がびくって跳ねる。見えないのに、どこを触られているかは手に取るようにわかる。太ももを掴まれ、押し広げられて、舌がぬるりと穴まで侵入してくる。私の体は、その侵入をきゅうきゅうと締めつけた。自分からは触れないのに、相手の動きが見えないのに、私は確かに犯されている。
舌が抜かれると、すぐに太い指が割れ目を上下にゆっくりと分ける。閉じたおまんこが勝手にひくついて、愛液がにじんでくるのが自分でもわかった。指先が入り口に触れて、ぬるっとした液を絡めながら、ゆっくりと中に押し入ってくる。
「や、あ……指、入って……」
